第14回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

佐々木 良宜
2002年度 筑波大学卒

報告


内容

  1. ユニバーの感想
  2. ユニバーに向けての準備
  3. レースに対する評価
  4. 反省(今後のアドバイス)
  5. チームに対する要望
  6. 強化合宿に参加したものとして
  7. 今後の自分の目標
  8. 謝辞

ユニバーの感想

今回、日本代表として初めて世界の大会に出場してきて多くのことを得ることができた。 ユニバーに向けて前回出場した人の話を聞いたり、大会報告書、遠征ガイドブック(SQUAD JAPAN発行)を読んだりして走る前から大会の大部分をイメージし、かなりの時間をかけ準備して大会に臨んだ。 しかしながら、世界トップクラスの走りは想像以上のもので、自分が行ってきた準備はレベルが低いということがまじまじと身に染みてしまった。 本番になったからといって普段以上の走りをできるものではない。 国内でもっともっとオリエンテーリングを上達させ、今回の大会をひとつのステップとして次なる世界の大会に臨みたい。

ユニバーに向けての準備

選考会までの準備

2003年3月、つまり自分のインカレが終わった直後からユニバーを意識し始めた。 きっかけは前回のユニバーに出場した加藤さん、小泉さんの話を聞い

たからだった。 そのときから自分はもうユニバーを走るつもりで準備をしてきた。 大学卒業後も進学してつくばに在住していた自分にとってトレーニング環境としては最高によかった。 つくばに住んでいたNT(ナショナルチーム)の高橋さん、小泉さんの存在はとても大きな心の支えとなり、ユニバーに向けて準備することができた。

6月の本大会に向けてピークをあわせるのに、4月のセレクション後出場が決まってから準備しているようでは遅いというのは前回の報告書で既に述べられているとおりで、ユニバーを意識したときから準備を進めた。

2003年の4月から6月にかけては基礎体力を向上させるために、筋トレを積極的に取り入れた。 ランニングも徐々に距離を伸ばし7、8月は量より質を求めてトレーニングし、インターバル系のスピードトレーニングやロングジョグで最後はペースを上げるようなトレーニングをしていた。

2003年9月にNTの強化指定を受けたこともあり、身近なところでトップの刺激を感じながらトレーニングをできたことは自分でも幸運であった。 NTの強化方針に従いながらトレーニングを順調に進めることができた。

11月下旬に膝を痛めてしまいそれ以降2ヶ月近く充実したトレーニングができなかった。 1月の下旬から再びトレーニングを開始したものの、十分な走り込みなどができなかった。 体力的な部分がセレクション2週間前の全日本大会に間に合わず、事前に結果を出すべきところで出せなく、不安を抱えたままセレクションをむかえることとなった。

不安を抱えたままのセレクションであったが、これまでの準備してきた期間ユニバーで走ることを常に意識し続けてきたことが支えとなり、セレクションでは自分の走りができた。 準備を始めてからセレクションまでの1年間で精神面が成長していることがはっきりと確認でき、大きな自信となった。

選考会からユニバーまで

選考会後の最初の合宿で出場する個人種目を決める際、スプリントとミドルに出場する希望がかなった。 スプリントとミドルにかけようと思った理由は、これまで自分がレースをこなしてきたなかで、ロングを走る持久力よりはスプリントを走るスピードのほうにアドバンテージがあると感じていて、自分がユニバーの個人種目で結果を出すなら、少しでもアドバンテージがあるスピードをもって挑戦したいと思うようになってきたからである。 また、昨年の11月の故障からの回復過程でうまく長距離を走るスタミナを得ることができず、ユニバーのロングを走りきるだけの持久力をつけるのは時間がないと考えたからである。

オリエンテーリング以外のトレーニングは特に時間を増やすことはしなかった。 4月は選考会前後の疲れをとることに専念し、5月前半のWOC選考会、ユニバー強化合宿、NT合宿があるのを念頭に入れて準備した。 5月前半はそのハードスケジュールにてオリエンテーリングの時間を増やし、後半はいつもどおりのトレーニングよりはスピードトレーニングに比重をおいた。 内容としてはリレーを走れるだけの持久力をつけるための時間を短めにしたLSD(長くても90分)、スプリントで課題となるスピードをつけるための様々なバリエーションのインターバルランニングが中心であった。

6月の東大大会で自分が思った以上に疲れていることと回復力もなくなっているとわかったので出国までの2週間はトレーニングの量を落とし、本番でいかに実力を発揮できるか考えて準備した。

精神面の準備

代表選手に決まったのであるから、自信を持って周りの人に接するように心がけた。 ときわ走林会の方々や筑波大のOBOGの方々や父母からの援助に対するお礼の挨拶といった自分に関わるすべての人に対する発言には目標を添えて行った。 このことにより自分で口にしたことに対する責任感などがうまれ、自分の行動ひとつひとつがユニバーにつながると感じた。 これは不安に思っている部分や弱気になっている部分を押し倒さないとできないことである。 精神面の準備には適していたと思う。

時差ぼけ対策

今年のユニバーは日本を出国してから3日間しか現地で準備する時間がなく、時差ぼけのまま出走はしたくないので、出国の5日前から寝る時間帯を約3時間ぐらいずらした。 夜中の2時~3時に寝て、朝の9時~10時起きの生活であった。 チェコについてからはすぐに現地の時間に順応できた。

レースに対する評価

成績のとおり体力面、技術面、精神面などトータルでみるとまったく海外の選手に及んでいない。 しかし、他の選手と並走し、スピードに乗るチャンスがあればそれを利用して走るスピードはあったと思う。 結果についてはtable 1に示す。

Table 1. Result
種目 時間 順位/総数 距離(km) アップ(m) キロタイム トップタイム 対トップ比(%)
スプリント 12:29 49/79 3.25 30 5:41 14;42 126
ミドル 57:27 80/102 6.7 250 8:34 37:27 153
リレー 49:47 - 7.35 240 6:26 36:44 136
スプリント

レース直後の感覚としては「悪くはないレース」という感じだった。 レース中盤にミスを2回してしまったものの、そこまで大きくミスしたという感じはしなかった。 スプリントのレースをするといつも大きくミスっていたが、準備してきた甲斐があってキロタイム5分41秒でレースをまとめることができた。 しかし、目標としていた20位とはほど遠い結果となった。 トップと比べると4分近く離されている。 スプリットタイムを見てみるとうまくいったレッグでも数秒から十数秒はなされている。 完全な走力差があることと自分ではミスと思わないロスが積み重なって大きく離されてしまうのだろう。

ミドル

微地形に対応できず、レース中は自分のレースのリズムをつかめないままで、ありえないミスを連発してしまった。 前日のスプリントとのギャップが激しすぎて自分をテレインの走り方に適応させられなかったのが原因だ。 どんなに調子が悪くうまく走れなかったとしても最低限トップの150%以内で走ろうと思っていたが、最低限目標も叶えられなかった。

前半でフィンランドや他のヨーロッパ選手と並走する場面があった。 彼らでも微地形地帯ではペースを落としてオリエンテーリングをしていたし、ミスもしていた。 私達でもミスしなければついていけないスピードではない。 順位的な結果を期待する場合、ミドルのほうが可能性があるということだろうか。

リレーの3走

リレーのメンバー、走順は事前に日本で決めておいたので3走を走る心の準備はできていた。 テレイン・コースの質共に前日のミドルとはまた異なっていた。 大雑把な地形で走りやすく、また、コースが難しく組まれていなかったもともありスピードを出すことが可能だった。 レース中に2回ミスをしてしまったが、ほかの部分ではしっかり走れた。 ミスをしたにしては割りといいキロタイムを出せているので、レース中調子のよかった部分を断続的にではなく、レース全体で発揮できるようにしたい。

ロング以外のレースに絞った準備をしてきたわけだが、結局のところスピード持久力がなく、走る速さに差があったと思う。 トレーニングのレベルが低かったということになる。 スプリントで世界大会に挑戦しようというのであれば、純粋に速く走れる走力が必要であるし、速く走っている中でミスのないオリエンテーリングをしっかりできるようになることが必要だ。 また、いままでミスと思っていなかったミスを見つけて理解し改善していかなければならないだろう。

反省(今後のアドヴァイス)

レースに向けて準備している途中、体力面で余裕を感じることがなかった。 疲れやすく、十分に回復しない身体の状態で準備をしてきた感じである。 怪我で一度走れなくなってから、体力のレベルアップをまったく感じなかった。 レース本番も何とか持ち合わせてた体力で何とか走りきったという感じだった。 今回は間に合わせのような対処しかできなかったので、これ以降は長期的な計画の下に準備をしていくことが重要であることが必要だ。

チェコのテレインでレースをした結果からすると技術的な部分では、スピードに乗ったときの手続きとスピードの切り換えが課題となってくるだろう。 日本では普通にレースに出るだけではトレーニングしきれないので、合宿などで積極的に取り入れるべきだろう。

チームに対する要望

選手強化に関して

今回セレクションが終わってから本大会まで2ヶ月と短い期間だったこともあり、強化合宿はレース形式のトレーニングが多かった。 そのため前回大会の報告などから基本的な技術の強化を目的とした日本学連合宿がセレクション前(2003年9月、2004年2月)に開かれ、参加した。 多くの選手が参加していたが、セレクション以前の状態で参加者全員がユニバーに向けた強化という意味合いで取り組むのは難しいのではないかと思った。 しかし、その合宿でユニバーを意識し始める人もいたので今後もそのような合宿が開かれることを望む。

選手強化を考えたとき強化される本人が選手であることを自覚しなければ強化合宿の効果が期待できないのではないだろうか。 今回は大会が6月であったため、選手に決まってからの準備期間は約2ヶ月間のみで強化をするには期間が少し短いような気がした。 強化に関してはもう少し工夫が必要だと思う。

強化合宿に参加したものとして

強化合宿に参加するならば、最低限前回の合宿で出された課題は全員がしっかりやってきてほしかった。 みんなで地図を読みまわしてルート検討するのに地図が足りなかった。 ルート検討の前にコースを組んでくるということは、テレインを研究してくることにつながるのだから、事前に対策をすることに意欲をもってほしかった。 チームとしてユニバーに向けて準備している時にこうであると、やる気あるのか?と疑られても仕方ないと思う。 しっかりやっていれば本番でもっといいパフォーマンスをだせていたはず。

今後の自分の目標

インカレが終わったあと目標を失い競技的なオリエンテーリングから離れる人が多い中、このユニバーは常に自分の目標であり続け、それに向かって準備していくことができた。 今回の経験をひとつのステップとしたい。

学連側がどのような選手を送り出すのかにもよるが、ユニバーで入賞者を輩出することを目標として選手を派遣するならば私は出場機会があるのでユニバーに関しては2006年の大会に出場しリレーの入賞とスプリントで20位を目標に頑張りたいと思う。 次回出場するとなると選手の中では最年長になるだろう。 セレクションで選出されることはもちろんだが、自分でもうひとつ条件をつけてそれが達成されていたら日本代表選手として走りたいと思う。

ユニバーに向けて準備していく中自分とは別世界だと思っていたWOCが身近に感じ、WOCに出場して入賞したいと思うようになってきた。 今年はなることができなかったが、今後は世界選手権の日本代表として走ることも視野に入れ、世界大会で活躍することを目標に頑張っていきたい。

謝辞

強化合宿などでは加賀屋さん寿理さんをはじめ、毎回スタッフ兼トレーニングパートナーとして来てくれた西脇さん、金子さん、深沢さん、そして田所、またほかにもトレーニングパートナーで来てくれたみなさんには本当にお世話になりました。 そして現地では加賀屋さん寿理さん尾上さんの3人にサポートしていただきました。 不自由することなく走り出せたことを感謝します。 そして今回の遠征に関して他にも多くの方々にお世話になり、援助もいただきました。 心から感謝します。


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