第14回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

番場 洋子
2001年度 京都大学卒

報告書


内容

  1. ユニバーまでの準備
  2. レースへの評価
  3. 今後へのアドバイス
  4. チームに対する要望
  5. 今後の目標
  6. 最後に

1. ユニバーまでの準備

1.1目標

目標は,「結果を出すこと」だった。私にとっての,この目標の意味は次の2つだった。

120%という値は,世界選手権での予選通過の目安となっている数字である。 世界選手権でたたかうためにはトップ比120%は最低限クリアしなければいけないレベルであり,目標として適切だと考えた。

また,私はこれまで計3回世界レベルの大会に参加してきたが,大会期間中に自信を失い,力を出し切れずに帰ってくることが多かった。 今の実力を反映した結果だと思えるようなレースをしたい,やってきたことに対する結果を得たい,と考えた。

1.2日本での体力トレーニング(2月~6月上旬)
時期 目的 内容
2-3月 減量,動く体にすること。 低強度長時間の運動。 持久力を付ける。
4月 新しい生活にトレーニングを組み込む。 動けば良し。
5月 量,質ともに高める。持久力レベル,スピードを上げる。 地図読み走(朝トレ),LSD,スピードトレ,
週末はオリエンテーリング。
加えて,平日の残りの日はjog等で出来るだけ長い時間走る。
6月 疲れを抜く。質を保つ。 地図読み走,LSD,週末オリエンテーリング

多いときで,13時間 / 週,少ないときで,5時間 / 週 だった。私は,社会人一年目でユニバーに参加した。 今後,このような立場で参加する人に,私からのアドバイスとして,

という3点を挙げておきたい。特に,1つ目は非常に大事だと思う。 出来るだけ早い時期に,自分の取り組みについて説明をして,職場の人達に理解してもらうことが必要だと思う。

1.3チームの取り組み

チームの取り組みとして,リレー目標設定のための話し合い,シミュレーション,マップでのリスク検討,現地での情報交換等を行った。 合宿が頻繁に行われたため,コミュニケーションがとりやすく,非常に良かった。 これらのチームでの取り組みは,日本での準備期間のモチベーション維持,大会期間中のメンタル面でのコントロールに大変役立った。 今後も是非続けていってほしいと思う。

2. レースへの評価

結果は,トップ比目標120%に対して,ロング146%,ミドル142%だった。 リレーについては,目標50分以内に対して52分だった。 どのレースでも目標とした成績に届かなかった。 しかし,2つ目の目標,自分に対する結果を得る,という意味では目標を達成できた。

2.1 良かった点
大会に対する姿勢について

今回のユニバーでは,1つ1つの結果に左右されず,今の自分を出し切ることに集中して全レースを走ることが出来た。 連日,レースが行われる場合,毎日のレースに対して気持ちを切り換えることは非常に重要だと思う。 出来ないことは,海外でどんなにあがいても出来ない。 たとえ初日の結果が予想より悪かったとしても,翌日以降,自分に出来ることは今の自分を出し切ることだけだ。 このような考え方が大会期間中を通して出来たことが,私の最大の収穫だった。 このような考え方にしたがってレースが出来たので,今の自分に対する結果は得られたと思う。

リレーへのモチベーション維持について

今回はチームの目標を,「リレーでそれぞれがベストの走りをして今後の指標となる成績を残すこと」と設定した。 結果は,トップ比146%で,日本女子の個人成績と比較すると,非常に良い結果が残せたのではないかと思う。

ロング・ミドルのレース後も,リレーでの情報伝達の練習として,レースを振り返り問題点を分析して,チームメンバーに伝えた。 この練習は,自分の次のレースにも有意義だった。 それぞれが高い意識でリレーを走れたことが,良い結果を残せた理由だろうと思う。

2.2 スピードの不足

ユニバー全体を通して,トップ比が非常に遅かった。 その原因の1つとして,オリエンテーリングのスピードが不足していると感じた。 海外の選手と併走すると,自分の普段のスピード以上でオリエンテーリングが出来た。 しかも,そのスピードは無理なレベルではなく,ナビゲーションも可能だった。

日本でオリエンテーリングの練習をする際,「ミスなく」を大前提にして「速く」行く練習のみをしていた。 「自分が,ナビゲーションが確実に出来ると思っているペース」でしかオリエンテーリングをしなかった。

しかし,それより速いスピードでもオリエン

テーリングが出来ることに気付いた。常に「ミスなく」を前提として練習すると,林の中を速く,追い込んで走る機会がない。 どの程度までスピードを出しても大丈夫かを試せない。 スピードアップのためには,「速く」を前提にして「ミスなく」オリエンテーリングをする練習も必要だと思った。

2.3 リレー1走について

今回,私はリレーの1走を走った。 前半は,集団についていけた。 中盤にミスをして集団から離れたが,集団から離れた途端にオリエンテーリングが難しくなった。 集団についていくと,自分のペースが楽にあがる。 コントロール付近では目が増えるので,コントロールを見つけるのが簡単になる。 1走を走り終え,集団から離れてしまったことを非常に後悔した。

 ユニバーレベルの場合,日本女子が走力的・技術的に集団についていけない,ということはないと思う。 しかし現状では,集団についていく,という練習が不足していると思う。 集団についていくためには,流れにのりながら,正しい方を判断する力が必要になる。 女子なら,自分達より速い男子選手のリレートレーニングにまぜてもらうことで,出来る限りついていきながら,正しい方を選択していく練習ができる。 このような練習を積めば,次のユニバーで集団と一緒に帰ってくることも十分可能だと思う。

3. 今後へのアドバイス

 ユニバーのラップ解析から,ロングはコンスタントに遅く,ミドル,リレーは大きくミスをしたレッグが敗因であることが分かった。 ミドル,リレーは,ハイスピードのレースの練習不足だと考えられ,前述のような練習が必要だったと思う。

 ロングは,加えて疲れがたまっていた可能性ある。 今回,現地に着いてからレースまでの期間が短かった。 それにも関わらず,毎日,強強度のトレーニングをしてしまったことで,疲れがたまったのではないかと思う。 12時間以上の移動疲れ,ストレスなど,純粋な筋力疲労意外にも,疲れをためる原因は多くある。 現地でのトレーニングキャンプで確認するべきことはできるだけ少なくしておくべきだと思う。

4. チームに対する要望

今回,選考から本戦までの期間が短かったために,毎週のように合宿があったが,これはチームの人とのコミュニケーションをとるには非常に良かった。 今回私は,学年的に離れて一番上だったため,ユニバー経験者の方達がスタッフとして合宿に参加してくだったことはとても頼もしかった。

5. 今後の目標

今後の目標としては,2004年,2005年の世界選手権で,決勝を走ること,リレーを走ること。 そのためには,基本的な体力アップ,そしてなによりスピードアップが必要だ。 計画的に練習を積んで,世界を舞台に戦えるレベルに達したい。

6. 最後に

ユニバーに出場するにあたり、たくさんの方から応援・ご支援いただきました。 ありがとうございました。 また,オフィシャルの加賀屋夫妻,尾上さんには,合宿の準備だけでなく,技術的,精神的なサポートまでしていただき,本当に感謝しています。 ありがとうございました。


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