第13回世界大学オリエンテーリング選手権大会報告書

加藤 弘之
2001年度東京大学卒

報告書


内容

  1. ユニバーまでの準備
  2. ユニバーの結果の考察
  3. 全体を通しての反省と対策
  4. チームのことについて
  5. 団体戦について
  6. 謝辞
  7. 今後

ユニバーまでの準備

トレーニング
jog Speed OL other total
4月 201 19 31 18 268
5月 182 18 50 0 256
6月 245 49 72 65 433
7月 165 26 32 28 251
8月 77 0 122 16 214

4月…距離を稼ぐ事を重点に行なった。おもに代々木公園での読図走をを行なう。

5月…ハムストリングの怪我と足首の捻挫により、あまり距離的に伸ばすことが出来なかった。Jogはほとんどが読図走。代々木公園でのpark-Oを週一回以上とり入れ、コンパスワークを練習した。

6月…量的には、1週間に100km・11時間のトレーニングを目標に行なった。そのために疲労をためないことが重要であったため、この時期に疲労の抜き方を知れたことがユニバー期間でも活きたと思う。バリエーションとしては、月・jog + park-O 火・読図走 水・speedトレ 木・jogまたは有酸素トレーニング 金・park-O 土日・OL。

7月…走りこんだ次の月は、体が原因不明の倦怠感を訴えることがあった(昨年の2月)ので、この月は無理をしなかった。水曜のspeedトレと週末のOLかマラニックを確保して、体に刺激を入れつつ、他の日は少な目のjogなどで疲労を取ることに重点を置いた。

トレーニングに関しては、また、近くにやる気のある学生が多かったため、モチベーションの維持に彼らといっしょにやることが多かった。日替わりでいろんな人とトレーニングをすることでとても楽しくトレーニングすることが出来た。一緒に走ってくれる人が近くにいることがとても大事だと思う。

目標

「short A-Final」という目標を立てた。また、2回参加したjwocでは、安定して自分の走りが出来なかった(ムラがあった)ので、「4レース通して、安定して自分の走りをする。」と言う目標を立てた。それを達成することで自分と世界の正しい距離を把握することが出来ると思ったし、この先世界に出ることがあった時に、どう言うテレインでも安定して走れることがとても大事だと思ったからである。

1. 遠征期間

7/31-8/4 5日間大会@チェコ 8/9-8/11 3日間大会@3日間大会 

8/14-8/17トレキャン@ブルガリア 8/20-8/24 ユニバー@ブルガリアと言う日程だった。

ユニバー前にチェコに行こうと思った理由は、

  1. 遠征の直前は、日本で調整すると周囲の雑務(学業)の整理や、焦りによって精神的に安定しない。
  2. 日本の夏は暑くて、体調管理も難しい。また、トレキャンに入る前に完全に時差ぼけを直したい。
  3. 本番前にOLの回数を増やしたら、本番でどのようなパフォーマンスが出来るかを知りたかった。
  4. チェコは物価が安い。また、2度遠征をしたことがあって、勝手がわかっていた。
  5. 大会に参加することで設置や撤収などの手間を省き、また、レース形式にすることで外人と競る経験を増やし、精神的な準備を行ないたかった。海外でのレース経験が多いということはこの先活きる事があると思ったから。
チェコでのOL 

ブルガリアでは、レッグの中盤はダイナミックに直進して、アタックで細かい地形に飛びこませると言うことが多かったので、アタックでの細かいロスをなくすことがカギだと思った。そのため、チェコでアタックの練習をしようと思っていた。5日間大会は、岩の多いテラインで正確なアタックが要求されると思っていた。くしくも5日間大会と3日間大会は、コントロール数が多く、最大で7.6kmで30個のコントロールがあり、合計8日間で215回のアタックを行なうことが出来た。しかし、この時期に大きな改善が見られたのは、脱出の動きであった。脱出でリズムを作ることを覚えた。また、1レースを通じて「精神的にきれない」ようにすることも改善された。

ブルガリアでの調整

トレキャンでは、4日間のトレーニングを積むことが出来た。この期間に、ショート形式を6本と地元大会でエセクラシックを一本走る事が出来た。全てレースペースで行なった。レースペースで常に結果(7min/km)を目指して走ることで、本番に出来るだけ近い状況を作り出そうとした。技術的な問題としては、どのレースでも必ず、最低1つ(1~2分)のミスを犯しており、それが無ければ、7min/kmをきれると言う感じだった。多くのレッグでは、技術的な要求に応えることが出来ていたので、自分らしい走りのイメージを作ることは出来ていた。

ユニバーの結果の考察

time top time % top time min/km
classical 118 87 136 8.4
short-q 33 26 127 6.9
short-f 36 28 129 8.0
relay 57 47 121 6.8
クラシック

後半にガス欠を起こし、終盤の3レッグで紺野さんに対して5分以上遅れている。序盤でもミスの多いレースだった。反省 明らかにトレーニングの段階における失敗 ウイニングが80min設定でtopの130%で走れても104分であるのにもかかわらず、2時間程度のLSDや高強度のマラニックを行なわなかった。トレーニングは、totalで週や月にいくら走ったということも大事だが、「1日当たりにどれぐらい」「一回につきどれぐらい」の時間・距離をこなせるかもきちんと把握して行なう必要がある。

ショート予選

ミスは、1分が二回。1つは、5番にいるのに6番にいると勘違いした。2分後の選手に追いつかれ、ペースアップしようと思ったところであった。もう1つは、藪の中を進むのに思いっきり自信を持って進めなかったことである。反省 自分ではそれほどミスっていないと思っていても、藪の中でのナビゲーション(方向維持しながらスピードを保って走る。)という技術に差を感じた。きれいなところを走るのは、差はつかないが、汚いところで確実に差を感じた。

ショート決勝

スタートからミスが2~3分。スタートから気負いすぎていた。後半は、蜂に刺されるなどのアクシデントがあったが、リスクの少ない走りができた。反省 レッグの課題に対して、正しい走速度で走れなかった。走っている最中に「走れている」と言う実感が必ずしも結果につながるとは限らない。自分のペースでレースをこなすことが大事である。

リレー

序盤からミスのしにくいリスクの少ない走りをした。それでも藪の中と微地形で合計2分ぐらいのロス。反省 1番上手く走れた。序盤がとても藪がちで且つ微地形であったためゆっくり入ったことが良かった。ただ、そういう藪の中で確実にトップとの差がついていた。前半の60%のところまでが藪と微地形でありそこまでで10分差。(トップは28分で自分が38分)後半のきれいなところは、トップと差が無かった。

全体を通しての反省と対策

4レースを通じて感じたことは、『藪の中でのナビゲーションに大きな差がある。』と言うことでした。どのレースもきれいなところでは、それほど差がつかないのに対して、藪のあるところでは、かなりの差がついていた。実際、クラシックでチェコの選手を追いかけてみたのだが、藪の中での方向維持がとても上手かった。藪の中でコンパスを何回も振れば、真っ直ぐ進めるのは当然だが、彼はほとんどコンパスを見れない速度で走っていた。もしかしたら見ていたのかもしれないが、藪を払う動作とあのスピードでは、何度も見れることは無いと思う。藪の中でいかに方向を定めて、そのあと藪に負けず真っ直ぐアグレッシブに走れるという技術が根本的に足りなかった。また、その正確性も必要である。

また、日本に比べて追い込んで走ることが出来なかった。やはり外国ということで微妙な地図表記の違いやその国でのOLに必要な技術がことなるせいもあるかもしれない。リスクを少なくすると言う意識を維持することがとても大事だと思う。

チームのことについて

今回は、今までよりも合宿が増えたようで、実際に2週間に一回は合宿があった。このことはとても良かった。これぐらいのペースで合宿があれば、技術的な反省と対策を効率的に出来たとおもう。また、日本のトップクラスの選手が来てくれたおかげで、トレーニングに対するモチベーションを維持することも出来た。

選手もとても意識の高い人が多くて、やりがいがとても高かったし、やりやすかった。今までのjwocでもそうだったのだが、選手に選ばれてしまったあとモチベーションを維持出来なくなる人がいるが、そういう選手がいると他の選手にとても悪影響を及ぼすので、とてもやりづらい。

団体戦について

リレーについて、少し考えてみた。何故ならはっきり言って、今回のユニバーの中で最も表彰台に近いレースであったと思うからだ(今回は、8位まで入賞。参加チームは、15チーム)。ユニバーに出る人の多くは、インカレで熱い心を持ってリレーに臨んでいると思う。その割にjwocやユニバーなどの大会では、リレーは、どうしても「速いもの」「調子の良いもの」準備並べなくては行けないし、そのせいか「1人×4」と言う性質を拭えない。リレーは、それではこう結果を残せないと言うのは、インカレのリレーでも良く言われていることだと思う。しかし、やはり寄せ集め感が否めないのは、チームの中でリレーに関してまとまっていないからだと思う。ユニバーチームは、サークルの延長ではないし、「仲良しこよし」が必要と言っているのでもない。ただ、リレーで好結果を導くために、話合いや戦術の理解・相互のOLに関する理解は必要だと思う。今回のチームでは、そういう話合いがほとんど持たれなかったのがとてももったいなかったと思う。

また、ユニバー前にとある選手と話して思ったのだが、「日本チーム」としてのまとまりは、果たしてどこまで作られているのだろうか?NTと言うくくりがあるかもしれない。今までは、個人的には「『日本チーム』として世界に挑む。」そういう姿勢でいたことは無かった。けど、今後日本国内で頑張って世界で表彰台に上ろうと思うなら、こう言う姿勢が絶対に必要になってくると思う。そうすることでモチベーションも維持しやすくなると思うから。

謝辞

今回の遠征でも多くの方にお世話になりました。心から感謝致します。

今後

今回の遠征は、本当に多くのものを得ることが出来た。今後も世界を目指して頑張ろうと思う。1.9.2002


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