チャレンジナビについて、村越さんと柳下さんからコメントをいただきました。

- 村越さんのコメント -

アウトドアナヴィゲーションのスタンダードを要求するコース

 結果としてみると、半数を超える人が完走できなかったが、コースは決して難しすぎるものではなかった。 より正確にいえば、多くの人が大きくタイムロスした2→3の尾根はアウトドアナヴィゲーションの基本中の基本ともいえる課題であった。
 個人的に聞いた感じでは、かなりの人が中間にある南東にトラバースするルートにのれず、尾根を直進してそのまま谷に降りてしまった。 その後、どうしていいか分からなくなり、傷口を広げたようである。 間違った枝尾根に乗ってしまうのは、登山遭難の40%をしめる道迷いの中での典型的なミスである。 実際、トップタイムの柳下も私もこの乗り換えでミスしている。柳下のミスはたぶん2〜3分、私のミスはたぶん15秒くらいだろう。

頭の中のベルを鳴らすには

 ではなぜ二人は傷口を広げずに済ませることができたか? 私は尾根たどりを始める時、このあたりで高いピークを左に見ながらトラバースするということを読み取っていた。 さらに自覚は薄いが長いオリエンテーリングの経験で、こうした尾根では分岐を間違いなく捉えることが難しいということも頭の片隅にあったのだろう。
 ところがトラバース道は見にくく、ピークに登りかけた。当然、左手にピークが見えない。「おかしい!」頭の中のベルが鳴った。 トラバース道を見逃した自覚はなかったので、半信半疑だが、戻ってみると、草に半分隠れた小道が見えた。その延長線上に見える尾根の方向も南東で間違いない。
 この区間での教訓は、どんな間違いの可能性があるかを考えた上で、ルートの周囲に何が見えるか、間違えた何が見えてくるかに常に自覚的になることだ。 それが「危ない!」という頭の中のベルを鳴らすことにつながる。 この教訓はオリエンテーリングだけでなく、日本の一般的アウトドアナヴィゲーションでもミスを防ぐことにつながり、ひいては無事に帰ってくる確率を高めてくれることだろう。

スタンダードスキルを獲得し、安全なアウトドアを!

 コースは全体としても尾根たどりから谷への下り、より細かく、道の不明瞭な尾根たどり、と徐々に難度を上げて組まれていた。 尾根を素早く移動することはオリエンテーリング以外では求められないが、 素早くできれば地図読みやナヴィゲーションへの負担感が軽減され、結果として常に確実なナヴィゲーションをしようという気になる。 その意味でも、やはりアウトドアに不可欠なナヴィゲーションスキルが問われていた。
 是非ともこのレベルのコースが(努力は必要だとしても)ミスなくクリアできるレベルを目指していただきたい。 それはスキルを磨く楽しみを与えてくれると同時に、コントロールされた危険の中でアウトドアで遊ぶことを可能にしてくれるだろう。

- 柳下さんのコメント -

S→1

S→1
スタートから1までは登りがきついが、ナビゲーションは難しくない。 地形が南北に伸びる尾根へと収束していくことと、スピードがゆっくりであるためである。

1→2

1→2
1からすぐ斜面の踏み跡をトラバースして鞍部へ向かう必要がある。 鞍部から尾根上の道は明確なので、大きく南東方向に向かうことを意識して進む。 途中のピークは南側に巻き道があるので利用すれば若干の短縮になる。(読み取ることは必須ではない)

2→3→4

2→4
(2→3)
序盤ではここが最大のポイントになった。 まず東南東方面の尾根に乗り換える必要があるが、 2から植生の境目方向に急斜面を下る方法と、2の北東にある道の分岐からトラバース道を使う方法がある。 通常後者のほうが易しいところだが、分岐が鋭角なので見落としやすい。 次に2と3の中間地点で斜めに下り南東への尾根へ乗り換えるところがあるが、 ここが見つけられず、そのまま尾根を直進しまうケースが多かった。 ただ、そのまま谷を下りて4付近から登り返す、あるいは戻っても、数分程度のロスで済ますことができるはず。

(3→4)
3からは思い切って北へ10m下りて、道に乗るのがベスト。 道は尾根から谷をトラバースするようについているのをきちんと読み取りたい。 4付近は複数の谷が合流していて谷の幅も広いので、方向感覚が狂いやすい。 方向を確認して「谷の北側の尾根」を特定する。

4→5

4→5
まずは北へ登り尾根上にでる。北北東に向かう尾根に入り、 その後は尾根の分岐や方向の変化が何度もあるので、都度確認していく。 現在地を指で押さえる(サムリーディング)のが有効。 5は道から離れているので、手前のピークから東へ方向を合わせてアタックする。 5の南の尾根が平坦になる場所のすぐ北というのがヒントになる。

5→6→7→8(前半終了)

5→8
(5→6)
尾根をたどる。4→5をこなせたのであれば、特別難しくはないはず。 6の手前から道が不明瞭になっていることを読み取れればなおよい。

(6→7)
ひとつ南東側のピークから南へ下る。 尾根のラインがわかればベストだが、ヤブがある場合は大きな方向を維持して、 ヤブの薄いところを選ぶとよい。やや7の西側に出るのが理想的。

(7→8)
ここは尾根ルートと谷ルート(途中から北の尾根)の選択肢がある。 距離は前者が短く、比高は後者が少ないが大きな差はないので、 選んだルートを着実にこなすことが重要である。 なお、8は後半のスタートでもあるので、地図を裏返して9以降の地図読みするとよい。 (ただし、8を押し忘れないように注意!!)

(後半開始)8→9→10

8→10
(8→9)
尾根たどりと、南へ谷を下り尾根を1本横切り西へ谷を上るルートの2種類がある。 尾根たどりは前半の4→5で走った部分とほぼ重なるので未知の要素が少なく、 選択肢としてはこちらが安全だといえる。
※実線ルートは柳下さん、点線ルートは村越さんです。

(9→10)
谷をつめるがベスト。谷は登る方向に分岐しているので、分岐点できちんと方向を確認したい。 10へは道がつながっていないので、北へ伸びる尾根地形を読み取る必要がある。

10→11

10→11
途中まではすでに何度も通っている尾根道なので難しくないが、 道を離れて急斜面を南へ下る地点と、尾根から谷へ入る地点の2段階の位置の特定が必要で、今までよりも難易度が高い。 ここでは地形を読み取る力とコンパスワークの力が必須となる。

11→12

11→12
北へ尾根を横切りさらに尾根を登るルート(実線)と、 谷をくだり手前の尾根をやり過ごすルート(点線)がある。 いずれにしても登り返しがきつい区間で体力勝負となる。

12→13→14→15

12→15
12→13は5と共通なので難しくはないが、逆方向からだと印象が違ってみえるかもしれない。
13→14は高さを維持してのトラバース(コンタリング)を行う。距離は長くないので、きちんと高さを維持したい。
14→15は道が使えるので、息抜き区間である。

15→16→17→F

15→F
(15→16)
北へくだる道を使い谷を横切って尾根に乗る方法と、 15の50mほど西側の不明瞭な道から尾根に乗り下る方法の2種類ルートがある。 後者のほうがベストタイムが出る可能性があるが、前者のほうが安全な選択肢で、ここでは前者をおススメしたい。
※16→17→Fは省略

まとめ

今回のフィールドは全般的に道がかなり細く尾根の分岐も多いため、単に尾根上の道をたどるのも簡単ではないという特徴があった。 こまめに現在地を確認する(ピークや鞍部で確認しやすい)ことと、分岐後は再度コンパスで方向を確認することが重要となってくる。 ひとつひとつのミスが大きかった原因として、ミスに気付くのに時間がかかったということもあると考えられる。
できるだけ短い距離あるいは時間の間隔で確実に現在地を把握することで、ミスの時間を抑えていくことを心がけよう。