エリート・イベント ガイドライン2002

エリート・イベント・プロジェクト 羽鳥和重    


昨シーズンは、多くのエリートランナー、スコード他協力を頂いてエリートシーディングを提案させて頂き、また多くの大会主催者にご協力を頂いてシーディングの導入をすすめて参りました。今年は昨年のシーディングルールを手直しし、エリートイベントガイドライン2002として新リリースをさせて頂きます。

WOC2005に向けた選手強化に直接寄与させるためにも、エリートオリエンテーリングのプロファイル向上、そしてエリート選手達のインセンティブ向上のために、今後ともご理解、ご協力をお願いいたします。

今後も議論はエリート選手MLである、taro@lasbim.taiiku.tsukuba.ac.jp にて

常に意見収集などを図ります。最新のガイドラインについては、

http://www.orienteering.com/index-j.htm のトップページか

http://www.orienteering.com/~emit より辿ってください。


エリートイベントは以下のガイドラインをできる限り満たすことが望ましい。

ガイドラインはレベル1〜3の3つのレベルに分かれ、レベル2までを満たすことが望ましい。

 

レベル1

・大会コントローラにより、レース形式、コース難易度やコース長に必要かつ適切なコントロールが行われる

・適切な参加資格により、男子で60名、女子で30名程度以内に制限される

・適切なシーディングが実施される

レベル2

・電子パンチングシステムが用いられる

・速報結果がレース終了後速やかに供給され、ラップ解析等が供給される

レベル3

・パンチングフィニッシュでなく、計時線において独立した2系統による計時を行う

・観客を意識した会場やスタート・パブリックコントロール・フィニッシュレイアウトがされる

・リアルタイムのアナウンスやリザルトボードによるの演出が行われる


 
男子はAシードをナショナルランキング1〜10位の選手、Bシードを11〜20位の選手とする。

 女子はAシードをナショナルランキング1〜8位までの選手のみとする。

 いずれも、エントリー不足等による補充は行わない。

 最新のナショナルランキング(http://www.orienteering.com/~squad/ 参照)をもとに作成する。

 

シード選手の並べ方

・末尾よりA、Bの順で並べ、間にノーシード選手を配置する

 つまり、N       B  B  B  B  B  A  A  A  A  A
という順番となる。

・スタート間隔は2分(シード相互には4分)を実施する

・A,B,Nそれぞれのカテゴリ内の選手配置は抽選により配置される

但し エントリー数 < シードの総数 X 2 + 4  の場合

つまりBシードの前にノンシード5名10分の人数を確保できない場合は、ランキング順位末尾のB選手からシードを順に外してノンシード選手に算入し、Bシードの前にNの選手5名を確保する。

 


エリートシーディングのQ&A

 

Q.男子20人のシードは多すぎるような気がします。10人のAシードのみでよいのでは?

A.男子Bシードの選手の中には、Aシードと互角かそれ以上の走力を持つランナーもいます。例えばBの選手がAに挟まれる場合、意識的にバンチングを行わなくても相互に影響し合う可能性が非常に高くなります。これを避けたほうが良いという点がまずひとつ。次にエリートランナー40名のアンケート結果では、ほとんどのランナー特にBシードはエリートを目指す・継続するために、Bシードが非常に効果的な目標となり得ると答えています。

Q.女子8人シードが少ないのでは?

A.確かにそう感じるかもしれません。しかし、あらゆるデータ(エリート総数、トップ比など)で、現在女子エリート層は男子の半分以下、あるいは3分の1であると示しています。レースによっては総数が20人に満たないこともしばしばです。リクエストがあれば、今後の検討課題とすべきでしょう。

Q.効果的なシード選手演出方法はありますか?

A.海外の例を積極的にならいまししょう。シード対象の選手は、
・他の選手と色の違うナンバー(ゼッケン)を着ける
・プログラムに紹介される
・スタートリストに明示される
などはどの主催者も簡単に実施できるものです。特にAシードの選手は、スペシャルビブスだとよっぽど気分がいいのか、これみよがしにビブスを着けて会場でウォーミングアップする傾向が高いと思われます(半分本気・冗談)。また、シード選手の最後のフィニッシュが、大体同じ時間となるようにスタートを配置するのも、なかなか気づきませんが、男女選手相互にとっても有力な演出となります。

Q.スタート間隔は3分の方が競技性が高いのでは?

A.フィニッシュ地区において、観客にとっては3分間隔、例えばAシードだけでも10人で60分近くを見るのは少々間延びします。観客でなくとも、BやAの選手相互も、実はお互いのフィニッシュを待って結果を知りたかったりします。2分間隔、シード間4分は、エリート選手へのアンケート、シード選手相互にとっても「問題はほとんどない」という同意が取れており、人数が極端に少ないなど、特段の理由がなければ、2分間隔での実施を推奨します。

Q.他にシーディングの効果は? 

A.有力選手にとって、会場での十分なウォームアップ時間が確保できる、有力選手相互のレース条件が同等になるなど、副次的な効果は大きいものがあります。

Q.演出と選手への競技情報の制限など、どのような点に留意すべきですか?

A.過去には演出等を強く前面に出すことによって、後続のランナーは前のランナーとのタイム差がわかるなど、ルールに規定する情報伝達の禁止等競技性をいくらか損なう面が出てくる場合もあり、特にWOC97前後より IOFなどでも様々に議論されてきました。
しかし現在はオリエンテーリング、特にエリートイベントでは、演出は競技を支える特に重要な一側面であり、積極的にパブリックなものにしていこうという流れが世界的な潮流になってきており、またIOFも強力に推進をしています。前走者とのタイム差アナウンスやカウントダウンなども、世界のエリートイベントでは積極的に行われており、観客のみならずエリートランナー達からも、”開かれたオリエンテーリング”が積極的に支持されてきています。秒差を知らせるリアルタイム演出や会場でのスタート・フィニッシュなども、できれば積極的にチャレンジしていただきたいと考えます。

Q.シーディング等を実施する場合で疑問があるとき、どうしたらいいですか?

A.主催者にとって疑問がある場合は、解決策を探ったり、エリート選手の意識を確かめるためにもtaroML(taro@lasbim.taiiku.tsukuba.ac.jp)で事前に議論にのせるのが、一番効果的で重要なアプローチだと考えます。直接的にエリートランナーの意見を聞くことができますし、同意を取ることもできます。私(羽鳥)も事例などをひきながらコメントができるでしょう。


また、エリートイベントガイドラインは、あくまでガイドラインで強制するものではありません。ですが、項目のいくつかは実際にエリートランナーランキング上位40名以上アンケート等を通して、海外での実施例などを参考にしながら希望や意見の最大公約数を目指したものです。今後もエリートの意見からよりよい改善があれば、すぐに修正を反映させますし、主催者は必要に応じてカスタマイズすべきでしょう。

以上